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【選挙妨害規制すべき?NHKニュースを紐解く】

先日2024年4月16日に始まった東京都15区衆議院補欠選挙で前代未聞の光景が江東区各所で目撃された。JR亀戸駅前ロータリーにおいて、乙武洋匡氏の前に、政治団体『つばさの党』根本りょうすけ氏の街宣車が横付けされた。乙武氏の演説が始まると、根本氏はロータリー内の電話ボックスの上によじ登って乙武陣営に批判を飛ばし続けた。その様子は、インターネットでライブ配信。こうした行動は他の候補の演説会場でも続き一時場は騒然となった。

有権者からは
「男の人がギャーギャー言ってるだけで良く聞こえなかった」
「(ああいった行為は)選挙を冒涜している。本来ならば政策を述べ合って議論すべき」
という声も上がった。
各候補者は演説会場を非公表にしたり予定を変えたりして対応に追われた。

日本維新の会金澤ゆい候補者
「前代未聞の状況であり、民主主義の根幹を覆す許しがたい事態」
ファーストの会副代表でもあり無所属の乙武洋匡候補者
「現行法によってああした行為が是認せざるを得ない状況なら何らかの法改正をしていくべきでは」
などという声も上がっているが、実際公職選挙法に照らし合わせていくと今回のつばさの党がした行為は、どのような違反に問われるのだろうか。

選挙の公職選挙法によると、候補者などへの暴行、または演説を妨害する行為は自由妨害罪として禁じている。この行為を受けて警視庁は、つばさの党根本氏らに警告を出した。選挙告知日に他の候補者に拡声器やクラクションなどを使い、聞き取れないようにしたことが該当するとしている。候補者が自由妨害罪で警告を受けるのは極めて異例との事である。

これに対し根本りょうすけ氏は、
「政治活動を始めたのが、今の国政政党が信じられないから。僕らはただ質問をしに行っているだけ。暴力的な事をするつもりはない。」
所属する、政治団体つばさの党代表黒川あつひこ氏は
「与えられた国民の表現の自由の範囲内において正々堂々と他陣営を批判している。
それを派手にやっているだけ。」その上で
「警視庁による警告は権力の乱用。」
また、黒川氏は東京都に対して
「警視庁が特定の候補者または候補者を推薦する者に肩入れし不公平な警備介入などを行っている、それらに対して賠償を求める裁判を起こした。」としている。

一連の蛮行と見られている行為も、根本氏、黒川氏にとっては

「質問をしにいっている。質問に答えれば帰る、国民民主党の玉木(雄一郎)代表(54才)や都民ファースト代表森村(隆行)氏(50才)は街頭で質問に答えて頂いた。その時には私達も(納得して)帰っている。ただ、他の候補者、他の方は残念ながら我々の質問に答えてくれなかった。答えられなかった、が正解だろう、」

との選挙中記者会見で述べていた。
これら一連の行為に対して公職選挙法に詳しい日本大学法学部安野修右専任講師は
「抜本的なルールの見直しが必要。何処までが表現の自由で、何処までが選挙妨害なのか。現行の公職選挙法のいろいろな取り締まり規則そのものがかなり老朽化して、制度的な限界を迎えている。」

憲法学が専門の北星学園大学経済学部岩本一郎教授は

「規制のあり方は慎重に考えるべきだ。基本的に選挙活動中の表現の自由は政治的な発言なので民主主義の観点から出来る限り尊重保護されなければならないと考える。ただそれを超えて必要なものについては公職選挙法や他の法律で規制する余地はある。それは、自由な選挙を確保するという目的のために必要最小限度の規制に留めるべき。」

インターネット・SNSを利用した選挙運動が浸透する中で新たな対応が必要だとする、議会のデジタル化・選挙に詳しい東北大学大学院河村和徳准教授は

「ネット選挙運動は、選挙のいろいろな意見を聞けるようにデジタルを使っているはずだが、それを自分たちの利益のために動画を取り、印象的な物を流し、視聴回数を伸ばす、という構造を作ってしまっている。ネット選挙のあり方、動画の配信のあり方にも議論していく必要はある。」

だが、その結果、投票率は伸びる様子はなく、前回の江東区長選挙よりもやや低いという結果になった。根本氏への投票数は1100票で最下位。必ずしもSNS配信が選挙の結果に繋がると言えない結果にもなっているのが事実である。黒川氏は 

「SNSで利益を得られるのではという意見があるが、今の時代そんなに稼げない。我々全体のチャンネルでも50万円も行っていない。選挙に使うお金の方が大きい。赤字だ。」

また、このような選挙に便乗されたのか、関係のない第三者、おぎの大田区議がいきなり現れ、ドタバタ劇を非常に大きくしていった。根本氏に倒された動画が大量に拡散されたが、別の角度から見るとおぎの区議が根本氏に、自らの背後から体重をかけ、のけぞる様子が確認出来る。おぎの区議は黒川氏にも喧嘩を仕掛けるような挑発的な行動を取っている。

選挙期間初日の4月16日、ReHacQの生配信、各候補者を交えた討論会にこの度当選した酒井なつみ氏が欠席、候補者らと討論が出来ずに当選をはたせたのは、必ずしも有権者はインターネットやYou Tubeを見ているとは限らない現状が浮き彫りになった。そのような中でネット選挙の規制を強化するのもいかがなものか。

また、ネットでようやく騒がれるようになった小池百合子都知事のカイロ大学卒業学歴詐称問題も、根本氏、黒川氏があれだけ疑問視していたのに結局テレビでは何一つ報じず報道規制が敷かれていると考えざるを得ないのも現実だ。むしろ、今回こんな事が起きた、大変不快だから法改正するように揺動することはますます一方的な意見だけで言論の規制、報道の規制を進めることになりかねない。ここは慎重論に同意見だ。

《付録》

「選挙の自由妨害罪」とは?

公職選挙法では選挙の公正や候補者間の平等を確保するため、選挙運動のあり方などについて一定の制限を設けている。

このうち、候補者への暴行や演説の妨害行為などについては、公職選挙法225条で「選挙の自由妨害罪」が定められていて、違反すると、4年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金が科される。

公職選挙法225条

一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき

二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀き棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき

三 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき

参考サイト:
根本りょうすけ公式X
黒川あつひこ公式X
つばさの党wikipedia

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